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甘口カレーライス 1
「うーん……」
あたしはさっきからずっと、一枚の紙きれをにらみつけている。
穴が開くほどにらみつけても何の解決にもならないって、中学生になったあたしはわかっているけれど。
「いろちゃん? なにへんな顔してるの?」
廊下に出てきた隣のクラスの江田風花が、あたしの持っている紙をのぞきこむ。
肩のあたりで切り揃えられた風花の髪は、ふんわりと柔らかそうな栗色だ。夏に短く切ってから中途半端に伸びただけの、あたしの真っ黒な髪とは全然違う。
「三者面談のお知らせ?」
風花がプリントに書かれた文字を確認し、首をかしげながらあたしを見上げる。
風花はあたしよりだいぶ背が低い。中学に入ってにょきにょき伸びたあたしは、背の順で並ぶと後ろのほうで、風花は小学生のころからずっと一番前か二番目だ。
あたしはそんな風花に向かって、ちょっと大げさにため息をつく。
「んー、これどうしよう。あたしと先生だけで話すんじゃダメなのかな?」
「三者って書いてあるからねぇ……お父さんかお母さんが来ないとダメなんじゃないの?」
風花がいつものように、日なたでお昼寝したくなるような、のんびりとした口調で言う。
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