19人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
べっとりと触れた生々しい感触。幼いが故の妹の奔放さは、得体の知れない恐怖を少年に刻み込んだ。
「き、きもち、わるくて……な、なにか、きたないものが、ぼくの中に、入りこんじゃった気がしてっ……」
そうして思い出す。たった今、自分も、傍らの少女に同じことをしそうになっていたことを。
「ぼくは、きっと、きたないものに、こわされちゃったんだっ……だ、だから、さっきも、あんなことっ……!」
「だいじょうぶ」
冷静な声が、少年の動揺を優しく振り払う。
少女の腕が、少年の頭を抱きしめた。
「だいじょうぶ。けいくんは、よごれても、こわれてもいない」
「……ほ……ほんと……?」
「うん。ほんと」
少女は少年の頭を引き剥がし、両手で少年の顔を包み込む。
けれど、少年はもう、目を合わせられなかった。濁りのない瞳を覗いてしまったら、そこに種ほどの小ささであっても拒絶の色を見つけてしまったら、自分はどうにかなってしまう。
視線を結べないでいると、華奢な膝が、足の間に割り込んできた。
「え、なに……」
「どうしても信じられないなら……こわいなら、ぜんぶ、わたしのせいにすればいい」
目を合わせられないまま、少女の唇が、少年の唇を塞いだ。
最初のコメントを投稿しよう!