優しい蝶の青毒

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 べっとりと触れた生々しい感触。幼いが故の妹の奔放(ほんぽう)さは、得体の知れない恐怖を少年に刻み込んだ。 「き、きもち、わるくて……な、なにか、きたないものが、ぼくの中に、入りこんじゃった気がしてっ……」  そうして思い出す。たった今、自分も、傍らの少女に同じことをしそうになっていたことを。 「ぼくは、きっと、きたないものに、こわされちゃったんだっ……だ、だから、さっきも、あんなことっ……!」 「だいじょうぶ」  冷静な声が、少年の動揺を優しく振り払う。  少女の腕が、少年の頭を抱きしめた。 「だいじょうぶ。けいくんは、よごれても、こわれてもいない」 「……ほ……ほんと……?」 「うん。ほんと」  少女は少年の頭を引き剥がし、両手で少年の顔を包み込む。  けれど、少年はもう、目を合わせられなかった。濁りのない瞳を覗いてしまったら、そこに種ほどの小ささであっても拒絶の色を見つけてしまったら、自分はどうにかなってしまう。  視線を結べないでいると、華奢な膝が、足の間に割り込んできた。 「え、なに……」 「どうしても信じられないなら……こわいなら、ぜんぶ、わたしのせいにすればいい」  目を合わせられないまま、少女の唇が、少年の唇を塞いだ。
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