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「今はそんなことを言ってる場合じゃないだろ?」
「え…あ、あぁ……
えらく凝ってるよな。
相当金かかってるぞ、あのコスは…」
「コス?コスって、コスプレのことか?」
「そうだ。考えても見ろよ。本物の河童なんかいるもんか。
つまりだな…こいつは、ハロウィンの仮装をして、お菓子をもらいに来たんだよ。」
「ハロウィンだと!?
まだ29日だぞ。日付的には30日だけどそれでもまだ早い!…それにしたってなんて人騒がせな…」
龍之介は、イライラした顔で河童男の方へ戻って行った。
「おいっ!何をこそこそ話してやがるんだ。
早く食べるものをよこせ!」
その言葉に、龍之介のこめかみに青い血管が浮かび上がった。
「礼儀を知らぬおまえなんぞにやるようなものは何もないっ!」
「な、なんだとーーっ!」
今度は、河童男のこめかみがピクピクと動き始めた。
俺が危険な空気を察知し、龍之介をおさめようとした瞬間、河童男のやけに長い腕が高く掲げられ、そして龍之介の後ろの方に向かって降り下ろされた。
「な、な、な……」
それはまさに一瞬の出来事だった。
何が起こったのかもよくわからない。
ただ、龍之介は人形のようになってその場に崩れ落ち、河童男は、今度は俺の方へにじり寄って来る。
危険だ…こいつはものすごく危険な奴だ…!俺の本能がそう告げた。
逃げようにも足がすくんで動かない。
どうしよう…!?
助けてくれ、ロックの神よ…!
「ひゃあああああああーーーーーーー!」
俺の魂の叫びが、シャウトとなって飛び出した。
「う、うぅ…な、なんて酷い声なんだ……」
河童男は耳を塞いで俺に背を向け、そして、逃げるように玄関から走り去った。
ほっと胸をなでおろし、俺は龍之介に声をかけた。
「龍之介!しっかりしろ、龍之介!」
目は開いてるのに、まるで反応がない。
全身から力が抜けたような状態で、本当に人形みたいだ。
外傷みたいなものはどこにもないけど、明らかに様子がおかしい。
俺だけではどうしようも出来ないと思った俺は、救急車を要請することに決めた。
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