ハロウィンの夜の訪問者

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* 「お、お、お、お前って奴はぁ……」 家に戻った俺を待ち構えていたのは、赤鬼みたいな顔をした親父と心配そうな顔でそれに寄り添うおふくろだった。 「本当にすまなかった! 俺、必ず大学には行くから…これから頑張って勉強して来年には……」 「馬鹿野郎!俺が三回受験しても入れなかった大学だぞ。 あと三か月しかないのに、入れるはずがないだろう?」 親父は絶対に無理だと笑った。 万一受かったら、入学金だけは出してくれるとも言った。 俺は、その時、無一文に近かったから、それはものすごくありがたい申し出で…… (おっしゃーーー!やったるぜーー!) それから死に物狂いで勉強しまくった俺は、見事、大学に合格した。 そのことで、親父は有頂天…! 俺が貯金を使ってしまったこともすっかり許してくれたけど、問題はそれからの生活のことだった。 いくらなんでも、そこまでは甘くない。 大学に通いながら、俺は学費と生活費を全部自分で稼がなくてはならない。 だからこそ、住む所も出来るだけ安い所が良かった。 それで、大学の最寄り駅ではなく、電車で30分程かかる特急や急行の停まらない駅に目星をつけた。 駅前もけっこう寂れた雰囲気だ。 これなら、きっと安い物件があるはずだ…と、俺は確信し、不動産屋の扉を開けた。 聞いてみると、このあたりの平均的な1ルームマンションは大学周辺のものよりも1~2万安かった。 だが、それでも俺にとってはまだ高い。 それに、俺には昔から閉所恐怖症の気があって、1ルームっていうのはあまり気が進まなかった。 そういう所だと、好きなロックもものすごく遠慮して聞かなきゃならなさそうだし。
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