ハロウィンの夜の訪問者

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「古くても良いから、もう少し広い所はありませんか?」 「古くても広い所ですか…お若い方には珍しいですね。 まぁ、そういうのがひとつあるにはあるんですが……」 その言い方はなんとも歯切れが悪い。 「えっ…!?ま、まさか……所謂事故物件…的な……?」 「いえいえ、そういうのではないんです。 ただ……不便っていうのかなんていうか……」 「なんだ、そんなことなら全然平気です! ぜひ見せて下さい!」 不動産屋さんが持って来てくれた間取り図は、なんと二階建ての一軒家! 部屋数は五つもある。 しかも、家賃が嘘みたいに安いんだ! それは嬉しいことだけど、俺の心を妙に不安にさせた。 「もう一度聞きますが、ここは本当に事故物件じゃないんですね?」 自慢じゃないが、俺はけっこう怖がりなんだ。 そういうのだけはどんなに安くてもごめんだ。 「ええ、違います。」 「変なものが出たりしないんですね?」 「しません、しません!」 「じゃあ、なんでこんなに安いんです?」 「ですから、交通の便とかがちょっと……とにかく一度ご覧になりますか?」 俺はもちろん頷いて、その物件に連れて行ってもらった。 駅前からは確かにけっこう遠い。 こんな遠い道のり、とても歩いては行けないし、自転車でも相当かかりそうだ。 これは通学が大変だぞ…… しかも、駅前から離れて行く程にどんどん建物が少なくなって…… 「ここです。」 「お…おぉ……」 家自体は思ってたよりもずっとしっかりした感じだ。 築十五年っていうことだったけど、そんなに古くも見えなくて、外壁なんてけっこう綺麗だ。 ただ……周りに建物が本当に少ない。 あるのは田畑がほとんどで、近くには森だか林だかわからないけど、なんだかこんもりした緑の密集地帯まであった。
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