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在学中もバンドメンバーは探したものの、なかなかうまくはいかなかった。
俺は楽器が出来ないから、ヴォーカルを希望したが、なぜだかどのバンドとも合わなかったみたいで、入れなかったんだ。
もしかしたら、俺は本場でロックを体験してきてるから、レベルが高すぎるのかもしれない。
だから、俺は卒業後もここに住み続け、バンドメンバーを探し続けた。
そして、龍之介は単位が足りずに留年し…
そんなこんなで、気が付けば、あいつとの生活もいつの間にか七年の歳月が経っていた。
そんなある日のこと……
*
「……誰だ、こんな時間に……」
騒々しくドアを叩く音に降りていったのは、午前二時を少し回った頃だった。
「こんな非常識な時間に訪ねて来るのは、君の友達じゃないのか?」
勉強の邪魔をされて明らかに不機嫌な龍之介が、悪態を吐く。
「どなたですか~?」
扉越しに俺がそう声をかけると、扉を叩く音は一瞬止んだが、何の返事もないままに、また再開された。
「……ったく……!
こんな真夜中に何の用だ!」
「あ……」
龍之介は、俺が止める間もなく、玄関の扉を開けた。
「う、うわっ!」
龍之介がおかしな声をあげて、反射的に後ずさった。
それもそのはず、そこにいたのは、醜悪な顔をした河童だったんだから。
「菓子をよこせ!いや、食べ物だ!よこさないと、ひどい目に遇わせるぞ!」
龍之介は俺に近付き、耳元で囁いた。
「山田……なんだ、こいつは?」
「山田って言うなって言ってるだろ!俺のことはランディって呼べって…」
初めて自己紹介をした時からずっとそう言ってるのに、コイツはいまだに俺のことを山田と呼ぶ……
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