ハロウィンの夜の訪問者

1/27
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「……なぁ…もしかして、今日もカレーか?」 「カレー、好きだろ?」 「そりゃあ好きは好きだけど…」 「だったら、文句言うな!カレーが一番安くて栄養がとれるんだから!」 「……はいはいっと。」 こんな答えが返ってくることは、質問する前からわかってはいた。 あいつの言った通り、月末はたいていカレーと決まっている。 俺は、好きなものベスト3に入るくらいカレーが好きではあるけれど、月末のカレーは野菜だけのカレーだからいやなんだ。 ベジタリアンでもないのに、何が悲しゅうて肉なしのカレーを食べにゃならんのだ! ……って、それは単に貧乏だから。 そもそもこんな変な奴と同居してるのも、俺が貧乏だからに他ならない。 四条龍之介……初めてあいつの名前を聞いた時、「おまえは侍か!」…そうつっこみたくなった。 とはいえ、平凡で昭和チックな名前の俺からすれば、すっごく羨ましい名前だ。 でも、ごたいそうな名前とは裏腹に、あいつのルックスはとてもショボイ……いや、変だ。 今時、一体どこでみつけてきたのかわからない、まるで、コントみたいな厚いレンズの眼鏡をかけて、見たこともないキャラクターの描かれたTシャツにスラックスという、だささ満載の服装をして、いつもでっかいリュックを背負って何かを読んでいる。 そう、奴の趣味は勉強なんだ。 いや、趣味なんて生易しいもんじゃないな。 ……生き甲斐とか、使命みたいなものと考えてるのかもしれない。 今も、大学院を目指して日々勉強中だ。 ちなみに、これでもう三年目なんだけど…… 奴はとにかく「勉強」というものが大好きで、誰よりも真面目でものすごく努力家なのに、悲しいことに頭が良くない。 考えてみればとても不憫な奴なんだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!