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14.花火(後)
「ここだ」
ついた場所は庭に張り出したガラス張りの温室のようだった。
「ここは、何?」
「サンルームだ。俺の母が赤ん坊の頃に造られたと聞いている」
そしてその真ん中になぜか真っ白な、ダブルベッドの幅は優にある布団が敷かれていた。
まさか、と思った。この場所でセックスするのか?
隆人が掛け布団を剥いだ。
「座布団代わりにしろ」
言われるままさらさらと肌触りのいい布団に正座をする。
その時空が光った。はっと振り向くと雷のような音とともに空に花が開いており、瞬く間に散った。
「わあ、すごい」
「消防の関係でこの大きさが打ち上げられる限界だが、ここならきれいに見えるだろう」
天井まで透明のこのスペースは特等席だった。
寝転がった隆人に倣って、遥も横になった。
光と音が近いということは、打ち上げている場所はここのすぐ近くに違いない。
「この花火は川で上げている」
遥の疑問を察したかのように、隆人が教えてくれた。
川とは、加賀谷の屋敷に水を引き込む元になっている川のことだろう。
また空に輝く花が立て続けに開いた。そして雨のように金色に輝きながら振ってくる。
「ハートの形をしている」とか「色が変わった」とか見たままを口にしながら、遥は子どものように興奮する自分を抑えられなかった。
隆人の口づけを受けるまで、儀式のことは頭から抜けていた。
「ん、見にくいよ」
「見ていられるだけ見ていればいい。俺が儀式を進める」
遥は慌てた。
「え、あ、そうか。でも――」
「気にするな」
隆人が遥の下半身を露出させた。起き上がった遥は顔をしかめる。
「それでいいの?」
「お前は花火を見ながら喜べばいい。供物としては最上のはずだ」
隆人に布団に押し戻された。
指で開かれて潤滑剤を注がれた。その間も断続的に花火は打ち上げられ、遥の白い着物と肢体は花火の明かりに照らされる。
興奮していない遥は隆人の侵入に息をのんだ。苦しい。きつい。まだ、隆人と一つになれていない。
それを隆人も感じたのか、ジェルが増やされた。
隆人の動きに性急さはなかった。じっくりと遥を押し広げてくる。
それは突然だった。いつも遥を快楽に押し上げるあそこを隆人が捉えた。体がビクンと跳ね上がる。
遥の中に炎が灯った。
もっと隆人に突き上げてもらいたい。遥は指を軽く噛みながら、隆人の動きに合わせて腰を振った。
徐々に腰から体が熱く燃え始める。喘ぎすら熱を帯びてきた。
あまりの快感に潤んだ目に、花火はもうはっきりとは見えない。
その輝きに照らされ、花火とともに鳳凰様と呼ばれる存在への供される隆人と自分のセックスを、まだどこかで恥じる気持ちがある。それはもしかしたら浅ましく悦楽を貪ろうと、隆人をくわえ込んでうごめく自分への恥ずかしさかもしれなかったが。
だが、気持ちはいい。
「遥、はるか」
「もっと――」
それならば完全に供物に――物になってしまえばいい。
動いて!
責めて!
いかせて!
欲望を口にすることはできなかったが、隆人の首に手をまわした。
しだいに激しくなる動きに何も考えられず、隆人にしっかりと抱きついて、闇に開いて散る花火のように一気に上り詰めた。
ぼんやりしている自分を桜木が清めて、着替えさせてくれている。
花火は終わっていた。
隆人が抱え上げてくれた。
「後は宵の禊ぎだけだ」
優しくささやかれる。
なぜ優しいのだろう。
自分はうまくやったのだろうか。
隆人の胸に甘えるように顔をすりつけた。
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