彼は友達

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その頃そんなやり取りがあったなんて知るはずもない私は、友達の予言どおり告白されていた。嬉しかったけど、まだ私の中には石川への想いが残っていたから、丁寧に断った。 その直後、外から勢いよくジャージ姿の石川が入ってきた。石川はゆっくりと近づいてきて、私の手をとると、側に立っていた男子を威嚇した。 「コイツ、俺んだから。悪いけど帰ってくれる」 睨みつける石川にそういわれてその男子は足早に立ち去った。 言葉なんて何も出てこない。ていうか、今石川私のことを俺のだっていった? 男子の姿が見えなくなったのを確認すると、石川は私の手を軽く引っ張って人影のない体育館の裏に連れて行った。壁ドンなんていうと聞こえがいいけど、私の顔の横には石川が両手をついていて逃げられない。 「すげームカつくんだけど」 「その目、怖いよ石川」 「俺が誰と付き合っても何もいわねーし、最近じゃ武田先輩なんかと仲良くなってるし、わけわかんねーよ。何なんだよ、焦ってんの俺だけかよ」 …わけわかんないのはこっちです。ものすごく理不尽なことをいわれてる気がするのは気のせいじゃないと思います。武田先輩、先輩のいうとおり石川はまだまだガキのようです。 「つまり、石川は他の女の子とイチャついて私にヤキモチを焼かせようとしたけど上手くいかなくて、それどころか私が武田先輩と仲良くなっててムカついた、ということ?」 「…!」 視線を逸らしたのは図星だから?なんだろう、ちょっとだけ石川がかわいく見えてきた。そして、気まずい雰囲気をごまかそうと顔を近づけてくる石川を唇の手前で止める。 「何か私にいうことないの?」 そういうと、石川は焦らされて苛立ちの表情を見せつつも私の言い分も正論だとしぶしぶ理解はしているらしく、頭を掻きながら私の左肩におでこをくっつけた。その仕草が愛しくて、ついくせ毛の髪に手を伸ばしたら、やんちゃ度全開の表情とともに唇を舐めながら石川が顔を上げた。 私の意思を確認することもなく、石川の顔が近づく。 「好きな女目の前にして、これ以上我慢できねーよ」 触れた唇は今までで一番甘い。 これが初めての、恋人同士のキス。
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