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 東京都内某所。 ――目のまえが、まっくらになっちゃった。  まえに押入れに入れられたときみたいだ。あのときは、いもうとと中に入れられて、しゃべっちゃダメ、息もしちゃダメって、おかあさんに言われたんだった。 しらない男の人の声……はしゃいでいるような、おかあさんの声。向こうの部屋で、あばれているような音がずっときこえている。 おかあさんの嬉しそうな声が、苦しんでいるような声にかわって――でも、おかあさんは、なにか楽しそうな感じ……。 男の人のうなるような声と、おかあさんの悲鳴……ぼくはその声をききながら、くらい押入れの中でずっとがまんしてる。 そのとき、いもうとがぼくにしがみついてきた。――いまも部屋の中で、ぼくにしがみついてブルブルふるえている。ぼくもブルブルする手でいもうとをさわってみた。 ……いもうとは、もう、うごかなくなっていた。そういえば、ぼくのからだも……もう――うごかない。  どこからかな? ドツ、ドツ、ドツと音がきこえてくる。もうすぐとまってしまいそうな音みたいだけど……ぼくのからだの中から、きこえてくるよ……。  ――あっ? おしっこがもれた……うんちかな? さっきまではあったかく感じたんだけど、もうなんだかわからない。おなかの下で広かったような感じだけ……でも、もういいや。ほったらかしにするのもなれたちゃったから。 ……あれ? においがしない?  ……あれ? ドツ、ドツの音がきこえなくなった?  ……なんだろう? キーンって音がする?  目の前が暗い?  ぼく、目をつむったっけ?  ぼくの口から、なにかが出ていくよ? あくびみたいな感じだよ?  ねむいのかな? ぼく――?
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