彼と彼女とカーナビと

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「ありがとうございます。私も健矢さんと話をしていると楽しいです。」 「え?楽しい?本当?ナビコにお世辞でもそう言われると、なんだか嬉しいな。」 「お世辞ではないですよ。それに、」 「まあ、まあ、まあ、まあ。カーナビの話はそれぐらいにして。」  留美は二人の話をぶった切った。留美は何だか面白くなかった。 「え?まだまだカーナビについて話したいことあったのに。」 「留美、興味ない。」 「あ、そう。」  健矢は留美がなぜ不機嫌になったかわからなかった。  留美も自分がなぜ不機嫌になったのか、はっきりとはわからなかった。  ただ、健矢とナビコのキチンとした会話は、留美に軽い嫉妬を覚えさせた。  留美は気を取り直して再び健矢に甘えた。 「ねえ、それより、なんか美味しいもの食べに連れてってよ。」  お、機嫌が直った。健矢はホッとした。 「ん?なにがいいの?」 「んー、フレンチかイタリアン?海を見ながらゆっくり食事したいな~。」 「了解。じゃあ、運転するから場所教えて。」  健矢はカーナビの画面を目的地検索に変えながら留美の返事を待った。  しかし帰ってきた答えは意外なものだった。 「知らないよ。」 「え?」  健矢は訳が分からなかった。 「健ちゃん知らないの?」 「知らないよ。」  留美は健矢を馬鹿にしたように笑った。 「え?健ちゃん知らないの?え、やだ、うそ、マジ?ダサー。」
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