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留美はイヤイヤ期の子供のように、甘えた感じでわがままを言った。
「なんだよ、どうした?」
「やっぱり山がいい。」
「山?」
「山の~、高原の~、それも人里離れてて~、隠れ家的な~、それでいて高級な~、一日二組限定とかの完全予約制のおしゃれなレストラン~。そんなところに行きたい。」
こんなに甘えていいのは確かな愛のある健矢と留美の間だからこそ。
そういうことを高らかに歌い上げるかのように、留美は、おねだりした。
いつもより執着のある留美の甘え方に戸惑いながら、健矢は留美に尋ねた。
「そんなところあるの?」
「留美知ーらなーい。」
留美の答えはさっきと一緒だった。健矢は嘆いた。
「えー、俺だって知らないよ~。」
「留美は知らなくても、健ちゃんは知ってなくちゃいけないの。ていうか、健ちゃんの大好きなカーナビのナビコちゃんに調べてもらったら?」
留美は挑戦的な笑みを浮かべた。
「おいおい、無茶言うなよ。いくらナビコだって、」
と健矢が困った声を上げたその時、カーナビが、
「ポン!」
と検索完了音を鳴らした。
「軽井沢の隠れ家的レストラン、検索完了しました。」
留美は、またもイラついた。
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