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ハロー、人類。
私はセブン。君たち人類に終末を伝えに来たよ。
え、人類ってくくりが大きい? 君の名前は?
澪ね。良い名前。
それじゃあ澪。こんにちは。初めまして。貴方にはこの繭をプレゼントします。
そう、大事に抱えてね。
何の繭か気になる?
それは天使の繭。八番目のラッパを吹く天使が産まれる繭なの。
終末に吹く七つのラッパを知っている?
七つのラッパは人類に贖罪と救済を運ぶ為のもの。終末の歌そのもの。
だから八番目のラッパは何が吹かれるかまだ決まっていない。
繭を育てるのは貴方よ、澪。
どうかその子をよろしくね。
そうして私は目を覚ました。
意識不明の重体に陥っていた私は脳に深刻なダメージを負っていたが、奇跡的に意識を取り戻したらしい、と。医者たちは誰もが驚いていた。
家族は私の目覚めを喜んでくれた。
父も母も、そして妹も。
「おかえり、姉さん」
妹の名はエイトと呼ぶことにした。
世界はほどほどに壊れていた。
資本主義の瓦解とか通信社会の放棄、コミュニティの矮小化と抗争と消滅の繰り返し。
そういうことが起きて、人類の数は少し減った。
代わりに他の動物は数を増やしたりしている。
妹とヴェスパに二人乗りしながら、舗装がところどころ剥がれた道路を走る。
「姉さん、そこを右だよ」
「ん」
風がまだ冷たい。顔に当たる冷気に鼻をすすると、エイトが後ろで笑う。
「帰ったらお風呂沸かすね」
「いいよ」
「どうして?」
「もったいない。ガスも無限じゃないもの」
「そうだけど。たまにはいいんじゃない?」
「次いく所で仕事があればね」
「はーい」
嬉しそうな声と共に胴に回されていた腕にぎゅっと力が入った。
エイトの体温がじんわりと伝わってくる。
その温かさが今は少しだけ心地が良い。
例え、彼女が自分と同じ人類でないとしても。
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