宮廷でのある日の一幕

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◇  大勢の文官武官が集まる王の間。そこで今繰り広げられているのは、少し妙な争い。 「先の失態の責は自分に御座います。何なりと処罰をお下しください!」  身なりが良く、勢いがありそうな少年が膝をついてそう皆に言い放つ。聞いている者達も難しい顔をしているが、そこに悪意も敵意も見えなかった。 「責任は王女であるワタクシに御座いますわ。責任を問われるのは彼ではありませんわ、上に立つ者のワタクシです」  白のドレスを着ている少女が、王の目の前で断言する。どちらの言い分も認められるもので、逆にそれを認めたら処罰をしなければならない。大人たちが困り顔を並べる中で、一人だけ嬉しそうにしていた。 「いえ、姫は何一つ落ち度など御座いません。全ては自分の責任です。陛下、何卒自分に罰をお与えください!」  姫を庇うつもりなのは誰の目にも明らか、良いか悪いかは別として、快く感じる者は多い。 「間違えの無い者をどうして罰せましょう。陛下、どうかワタクシをお責めになってください」  常に他者を蹴落とし、己の保身を優先してばかりの者達の心を打つ。若かりし日に胸に抱いた想いを、今また取り戻した者もちらほらと居る。王はにこやかに右手を前に出して二人を制した。 「両者の言い分は予が認める。だが功罪半ばとし、不問に処す。いや、予にとっては痛快な結果であるがな、はっはっは!」  互いが互いを庇おうとする姿を見て、恥じ入る者に軽く視線を流すと決裁を下す。国の未来は明るい、王冥利に尽きるとはこれだろう。
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