月の少女:謎の少女一人称

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月の少女:謎の少女一人称

 私は誰?  意識が戻ると月の光に包まれていた……。  以前の記憶がない……、私は誰?ここはどこ?なぜ私は裸なの?間もなくして月の光も消えてしまった。  何も解らず立ち尽くしていると、一人の、私と同じくらいの男の子が駆けてきた。  そして、彼は私の肩にそっと上着を掛けてくれた。知らない人、でも私を知っている人? 「もう大丈夫だよ。」  その言葉に、少しほっとした。何も覚えていない、何も持ってもいない、暗闇の中の今の状況に……少しだけ。 「ありがとう。」 「君、名前は?どこから来たの?」 「ごめんなさい。私、何も覚えてないの……あなたは、私の事、知らないの?」 「ごめん、知らないんだ。月から光が降りてきた気がしたから来たら君がいたんだ……」  それから、彼は私の事については何も聞かなかった。月から光がってどういう意味なんだろう? 「とりあえず、僕の家に来なよ。……おっと!」  彼は靴を脱いだ。 「そのままじゃ足を怪我しちゃう。僕は靴下あるから大丈夫だからこれ履いて。」 「本当にありがとう……」  嬉しくて、つい握ったその手は、彼の優しさと同じくらい温かくて。  私の恐怖を振り払い、彼に心を開くには十分すぎていた。  私は彼の手に素直に引かれて歩き始めた。 ・・・・・・  彼のお家は丘の上にある2階建ての一軒家だった。  彼は人指し指を口元に立て静にと言った相づちを打った。  静に、玄関を開け、静に二階を目指した。  チラリと見えたリビングのソファには誰かイビキをかいて寝ているようだった。  ゆっくりと階段を上っていく。 「君、名前も思い出せない?」  私は本当に思い出せず、首を横に降った。 「なんて呼ぼうか?」  そんなこと言うわれても……。 「ごめん、わからないよね。また後で考えよう。」  そう言って彼は二階の扉を開いた。 ・・・・・・  今、彼は部屋の外で、私は部屋で彼から借りた部屋着に着替えている。  これからどうすれば良いのか……このままあの人に甘えていて良いのだろうか……。あの人の親になんて説明をしたら良いのか?  私の両親は心配しているのだろうか……、どんな人なんだろうか……、いるのだろうか……。  そんなことを考えているとき、階段を上る足音が聞こえて来た。 「和秋?誰か来ているのか?」 「父さん……友達だよ!大丈夫だから……」 「バカを言え!友達だからって子供がこんな夜遅くに許されるわけがないだろ。せめて親御さんの了解を得ないとダメだ!誰が来たのか話しなさい!」 「それは……」  彼は黙ってしまった。  私がちゃんと説明しないとダメだよね……。私は部屋の扉を開いた。 「すみません。勝手に上がり込んでしまって。」 「女の子!和秋!女の子のお友達じゃなおさらだ!ご両親が心配される!」 「あの……おじ様違うんです……私、記憶喪失なんです。なんて言ったらいいのか……彼ともお友達とかではなく……知らない人で……」  手を腰に置き難しい表情のおじさんに。和秋くんは掴むように迫った。 「彼女は、神峰公園に立ってたんだ!本当なんだ!周りに人もいなくて!裸だったし、危ないし、だから連れてきたんだ!」 「裸って!事件か!それなら警察に連絡した方が……。」  警察はだめだって、頭のなかで誰かに言われた気がした……。  その声は、とても懐かしい気がした……。  その声の言うことをちゃんと聞かないとと思った。  私は、とっさにおじ様の腕を掴んだ。 そして「それだけは……」と呟いた。 「でもなあ、未成年を勝手に泊めると誘拐で普通、捕まっちゃうんだよなあ。」  彼は、はあーっと深いため息を着いた。 「かあさんもいないし……。」  もう一度、さっきより深いため息がでた。 「とりあえず、明日警察には連れていく。今日は、止まっていっていいよ。和秋、あとは頼んだ。」  そう言って彼は和秋くんの肩をポンと叩いた。  彼は階段を降りようとしたところでもう一度振り返った。 「和秋、明日は学校休め、父さん一人で警察はシンドイ……母さん、夜勤明けであてにならないから。」  また、階段を降りようとして、またまた振り返った。 「警察には落ち着くまで保護してた、と言うおう!それは絶対!」
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