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新鮮な、溢れた日常:ナレーション男性
窓から差し込んだ朝日は和秋の目蓋の内側を透き通る様な赤色に染め上げた。
六時半にセットした目覚ましより10分程早く起きた彼は、先ず何よりも先にベッドの上で寝ている月美の無事を確認しようと、床からそっと覗いた。
彼女は静かな寝息をたてていた。
迷いこんだ朝日が、長い彼女のまつ毛を流れ、白くふっくらとした頬を伝い、柔らかく実った唇を包む。
思春期の男の子ならドキドキしてしまう場面であるが、彼はまだ幼さが残っているようで、笑みを浮かべ、まるで妹を可愛がるように安堵した。そして目覚ましをoffにした。
今の時間は、朝六時。
彼は静かに着替えると、部屋を出て、そして家も後にした。
彼は道路を渡り、石の階段を駆け上がり、途中にある第三公園に通りかかる。
すると、気持ちの良い朝日が飛び込んできた。
絵の具をこぼしたように黄色く染まる日立の町並み。
海の向こうからやって来たお日様は、街並みを塗り替えながら歩いているようだった。
・・・・・・
ピンポンの音色は早朝の住宅地にはよく響いた。
「はーいどちら様でしょうか?」
「おはようございます。七草です。帆夏は起きていますか?」
「大丈夫だと思う……ちょっと待ってて。」
帆夏のお母さんだった。早朝の忙しい時間帯なので声の感じは少し慌てていた。
しばらくして、ガチャリと玄関の扉が開いた。
すると、いつもは活発で元気の良い帆夏であったが、玄関に現れた彼女は、着崩れた寝巻き、寝惚けて頬を赤らめ、髪もボサボサな、いかにもな寝起きだった。
「どうしたのよ~こんなに朝早くて……。」
彼女は大きくあくびをした。
「実は、服を貸して欲しいんだ。」
「えー……かずくんなら別に良いけど……なんでなの?」
「いや!僕が着る訳じゃないよ!いとこ、いとこが遊びにきたんだけどさぁ。昨日水溜まりで転んじゃったみたいで、服が全部汚れちゃったんだよ!だからぁ……。」
「ふーん、わかった、良いよ!」
彼女はニッコリと笑うと「ちょっと待ってて」と言って家に引き返した。
彼は安堵にもにたタメ息をついた。
程なくして大きめの袋を持った彼女が出てきた。
「ぜーったいに!かずくんは中を見ちゃダメね!」
と言って袋を彼に押し付けるように渡した。
「なんで?」と不意に袋を開けようとした。
「ダメだって!」
彼女は慌てて彼の手の上から袋を抑え込んだ。
「中には下着も入ってるの見ないでよ。かずくんのえっち。」
彼は思った、危ないところだったと。恥ずかしい思いをするところだったと。
帆夏のパンツが入ってるってことだろ?そんなのジロジロ見た日には変態じゃないか……。帆夏も帆夏で、ちゃんと言ってくれないと。もし、知らないで持って帰って家でパンツ広げちゃったらどうするのさぁ?恥ずかしいじゃないか……。どんなの履いてるのかちょっと見たいけど……、ってバカかと。
と、彼がもんもんとしていると、「本当、かずくんてすぐ、顔赤くなるよね~。」
彼女がクスクスと笑っていた。
「バ、バカ!僕、今日、学校休むから!後で宿題教えて!」と言うなり、彼は不意に走り出していた。
「ごめんって、私のせい??」と彼女は大きく声を響かせた。
「違う!そう言う、よ・て・い!」
「後でいとこさんに会わせてね~!」
「わかった~。」
朝から騒がしいと彼等はお互いに思った。
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