10人が本棚に入れています
本棚に追加
年の瀬も押し迫った、12月の賑やかな街中で。
私は仕事を終え、ひとり我が家への道を歩いていた。
商店街にはクリスマスソングが流れ、通り沿いのショーウィンドウをカップルが覗いている。お互いのプレゼントなどを、検討しあっているのだろうか。その背中をなんとはなしに眺めつつ、私は右腕を軽く押さえながら歩き続けた。しばらく前に起きた私の、右腕の「異変」を気にしながら。
それは最初は本当に、蚊に食われたくらいの小さな腫れだった。私の右腕の、肘の少し上あたりに、ぽつんと出来た赤い点のようなもの。いつこんな腫れが出来たのか、いったい何に食われたのか、全く覚えがない。仕事中になんだかむず痒くて無意識にぽりぽりと掻いていたのだが、あまり痒みが酷いので、トイレに立った時に確認してみたら「あ、これは何かに食われたな」と気づいたというわけだ。
こういう時はむやみに掻かない方がいいんだよなと思っていても、仕事に集中しているとついまた無意識に掻いてしまう。それでますます痒みが酷くなる。更には掻き過ぎたのかピリピリと痛み始めたので、もう一度トイレで痒みの箇所を見てみたら、ほんの数時間の間にその腫れは驚くくらいに大きくなっていた。こりゃあちょっと悪質な虫にやられたのかもなと、それ以降私はなるべくその箇所を刺激しないよう心がけ、我が家への道を急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!