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私の家族が、私を拒絶し続けてきた家族がいなくなったとはいえ。その原因となった虫たちは、もう部屋の中にいないのだろうか。そして、家族の「死骸」がそれぞれの部屋の中にまだ残されているのか……? そんな不安が頭をよぎった。
とたん、虫たちに肉を食いつばまれ、見るも無残な姿になった妻や娘の姿が頭に浮かんだ。いくらずっと私を拒絶していたとはいえ、そんな最期を迎えるというのはさすがにちょっと酷いかなと。それからやっと、あれこれ想像を巡らせているより、実際に確かめた方がいいよなと、私は家族の無事を、もしくは無事でないことを確認することにした。
まずはやっぱり、妻の、いや妻と私の寝室に向かうべきだろう。なんだかんだいって、長年連れ添った夫婦だもの。私はなんとなく足音を潜め、忍足で、目的の寝室へと近づいた。そして、部屋の前で一息深呼吸をし。思い切ってそのドアを開けようとした、その瞬間。
がちゃり。
私の目の前で、おもむろにドアが開いた。開いたドアのすぐそこに、私の妻が立っていた。
「ああ……!」
私は嬉しさと、ほんの少しの「残念さ」が入り混じった複雑なため息を漏らし。その残念さを押し隠すかのように、ここ数年触れてさえいなかった妻の体を抱きしめようと歩み寄った。その、刹那。
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