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「ぎゃああああああああ!」
思わずこちらが飛び上がってしまうくらいの叫び声を上げて、妻の方から私に抱きついてきた。いや、違う。私に、「飛び掛ってきた」!
……私はその勢いに押され、そのまま床に押し倒され。「おいおい、いったい……?」と無理に笑顔を作り、妻に語りかけようとしたが、その声は私の口から出てこなかった。妻の両手が、ぎゅ~~っと、思い切り私の首を締め付けていたのだ。
「ぐ、ごごごごご……」
息も出来ぬほど強烈に喉を締め付けられ、妻にこの理不尽な仕打ちの理由を問いただすことは出来そうになかった。そして、まるで鬼神のような顔つきで私に馬乗りになっている妻に、何かを訴えようとすること自体が無駄なことだなと悟り。私は自分の両手を伸ばすと、妻の首を挟みこむように、左右両側から空手チョップを食らわせた。
「ぐえええ!」
私のこの攻撃に、さすがに妻も自分の首を押さえ、私の上から飛びのいた。それでやっと自由になった私は、ぜえぜえと喉の痛みをこらえつつ、あらためて妻に問うた。「お前、いったい……?」
しかし、その問いに妻が答えることはなかった。答えるつもりもないようだった。私の言葉が終わらないうちに、再び妻が飛び掛ってきたのだ。これはちょっと尋常ではないなと、妻が私に掴みかかるすんでのところで体をかわし、なんとかこの場から逃れようとしたが。その私の行く先に、先ほどの妻と同じように、今度は我が娘が立ちはだかった。
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