毒虫

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「その通り!」  今度は私の背後で母親が叫んだ。ああ、やっぱりそうなんだ。いや、私は今、頭の中で「考えた」だけだ。そして、その考えを口に出してはいない。ということは。私が吐くまで私の体の中にいた虫たちが、女たちを乗っ取ったということで。女たちに、まるでテレパシーのように、私の考えが伝わるようになってしまった……とか? 「そうだよ! なかなかいいカンしてるじゃん!」  なんだかバカにしたような口ぶりで娘が言った。まあ、娘が私をバカにしたような態度を取るのは今に始まったことじゃないが。すると、完全に虫たちに乗っ取られたというよりも、それまでの人格を残しつつ意識を操られてるって感じなのかな。  しかし、SFまがいのキテレツな話ではあるけれど、どうやら私の考えた通りのことが起きているらしいことはわかった。昨夜私が吐いた虫たちが、私の家族である女たちを襲い。その体を乗っ取り、しかも私の考えを読み取る力を持ってしまった……! ってことか。まあ、私が大量に虫を吐いたってこと自体が信じ難いことなのだから、今のこの状態がその延長線上にあるものだとすれば、「ありえること」なのかもしれないが。それにしても……。それならなぜ、みんな揃って私を「襲う」んだ?  考えてみれば、私が虫を吐いたということは、いわば私は虫たちの「母体」だということだ。あの虫たちが凶暴な性格を持って生まれ、例えば生き物を見れば襲いかかるというようなモノだったとしても、母体である私だけは襲わない、ってなことがあってもいいんじゃないか? あれは『エイリアン3』だっけ、リプリーの目の前でエイリアンが襲い掛かるのをやめるんだよな。でもあれは体の中に「マザー」がいたからか。だが、「産みの親だけは別」ってことはないんだろうか……。
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