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最初は妻に薬のありかを聞いてみたのだが、夕食後の洗い物をしていた妻は、私が声をかけても反応せず。もう一度聞いてみてやっと、それも相当めんどくさそうに振り返り。振り返りざま、私に冷ややかな視線を投げつけた後、明らかに私に聞こえるように「ちっ」と舌打ちをし。そして、唖然とする私を尻目に再び洗い物の続きに戻ってしまった。
私は妻の態度に呆気に取られつつも、次にテレビを見ていた娘に同じ事を聞いてみた。娘も妻と同じく、私の問いかけに返事すらしなかった。さすがに私も、少し強めの口調で「場所さえ教えてくれればいいんだよ、後は自分でやるから」と付け加えたのだが。娘は「きっ」と私を睨みつけ、「……ウザいんだけど」と言ったきり、テレビの画面に集中し始めた。
もう、妻と娘に何を言っても無駄だろうと思った私は、最後にちょうど自分の部屋から出てきた私の母に話しかけた。が、母は私の方を見ようともせず、指先で「ちょいちょい」っとリビングの奥を指し示すと、娘の座っているソファーの隣に腰掛けた。
「あ、おばあちゃん、ちょうど始まるよ!」
「はいはい、ありがとね」
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