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「も~ろ~びと、こぞ~り~て~~」
私は再び、声に出して歌いだした。歌うのと同時に、私の心に得もいわれぬ気力が湧いてきた。なぜかこの状況が、楽しくて仕方なかった。ウキウキしてくるくらいに。
「むか~え、ま~つれ~~」
そうだ。私を、迎えまつれ。このアパート中の人間……いや、もしかしたら、それ以上に広がった虫たちよ。母体である私をむかえよ!
「ひさ~し~く~~、まち~に~し~~」
もう、ここの歌詞は覚えた。久しく、は待たせないぜ。すぐそっちに行くからな。
「しゅは、きませ~り~~、しゅは、きませ~り~~」
ドアノブを握り、体をドアに近づけただけで、私への剥き出しの敵意、想像を絶する殺意が体に伝わってくる。それも、私を恐れさせるには至らなかった。ゾクゾクと武者震いが全身を覆いつくすだけだった。
「しゅはぁ~~、しゅはぁ~~ああ」
今までよりも更に大声で、高らかに歌いながら。
「きま、せ、り!」
私は、勢いよく玄関のドアを開け放った。
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