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娘がテレビのチャンネルを変えると、何やらニヤけた面構えの若い男が出ているドラマが始まった。その男の顔には私も見覚えがあるが……いや、正直自信はない。私の記憶にある俳優と、今テレビに映っているヤツが同一人物なのかどうか。最近のこういうアイドルみたいな俳優は、みんな同じ顔に見える。
アイドルみたいな俳優というか、俳優もやってるアイドルというか。なにかこう、それぞれの個性みたいなものが感じられないのだ。誰がこの役を演じても、別段問題はないように思える。ただ、顔がいいことだけが条件かのような……などということを、我が家において口にすることは絶対に出来ないのだが。妻と娘はともかく、いい加減いい歳の母までもが夢中になっているのだから。
「ほら、洗い物はそのへんにして! もう始まるよ!」
母の呼びかけに、ついさっき私には冷たい視線と舌打ちしかしなかった妻は、洗い物で濡れた手をタオルで拭きながら、いそいそとリビングに入ってきて。「お母さんありがとう、これは見逃せないものね~~!」と、母と娘の隣に座り込んだ。私の実の母と、そして我が妻と娘。三世代の女性三人は、まるでここに私など存在しないかのように、楽しげに語らい始めた。
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