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「ちょっと、それ以上そばによらないでよ! まったくもう、今日は向こうで寝てちょうだい!」
……夫婦のはず、だったんだが。妻は私の具合を心配するような気配も見せず、私に枕をぐいっと押し付け。「しっしっ」と野良猫のように私を寝室から追い出してしまった。
元々一緒のベッドに寝ているとはいえ、いまや夜の時間帯も妻は私を全く無視していて、私が指一本触れることすら許されないのだけれども。それでも、「床を同じくしている」ということが、それだけは拒絶しないでいてくれるということが。恥ずかしながら、私と妻との「愛の証」であると思っていたのだが。
この醜く無様に腫れあがった右腕のおかげで、その証もあっさりと消え去ってしまった。もちろん、そんな私を娘や母が受け入れてくれるはずもない。まあ、枕を渡してくれただけましか……私は押入れから古い毛布を引っ張り出し、先ほどまで女性たちが盛り上がっていた、そして今はしーんと静まり返っているリビングのソファーで。一人寂しく毛布をかぶり、眠ることにした。
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