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帰ってきてからの私の気分の悪そうなしぐさ、そして一向に腫れの治まらない右腕のせいで、昨夜以上に妻に気味悪がられ、私はその夜も一人居間のソファーで寝るハメになったのだが。夜中過ぎになって、胸のムカムカが今までにない強烈な勢いでこみ上げてきた。胸というか、腹の底がざわざわとざわつくような。
こらえきれない気分の悪さに、たまらず私はトイレに駆け込み、便座を上げ。うええええ! と、胃の中の残り少ない食物の残骸を思いっきり吐き出した……はずだった。しかし。
私の口から、私の胃から吐き出されたものは。食物ではなかった。まるでそれまで外に出るのを我慢していたかのように、私の口いっぱいにこみ上げてきたものは……大量の「虫」だった。
それは大きさや形を例えるならゴキブリに近いだろうか、しかし黒くツヤツヤとした背中の羽は、どちらかというとカブトムシのように硬そうで、かといってカブトのように愛らしい見栄えでは決してなく。明らかに「害虫」を思わせる見てくれの虫が、いや虫たちが。「ぞぞぞぞぞ!」と私の口から吐き出され、そして「ざわざわざわっ!」と、便器の中でそのトゲトゲした足やせわしなく動き回る触覚をビラビラと動かしながら、泳ぎ回っていたのだ。
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