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「こ、ここはいったい……」
私は今の状況に愕然としながら、周りを見渡してみた。私が……私とその男がいるのは、さほど広い部屋ではなかった。ほぼ正方形に近い形で、一辺は七、八メートルくらいだろう。天井には剥き出しの配管がいくつも並び、壁も床もコンクリートで出来ていた。どこかの倉庫か、地下室といったところだろうか。私から見渡せる限り、四方の壁に窓はなく、私から見て左側の壁、その隅のほうに、鉄製と思われる扉だけがあった。ここでいくら大きな声や音を出しても、部屋の外には聞こえない。そう思わせるのに十分な作りだった。
「どうなってるんだ……ここはいったいどこなんだ。あなたは誰なんだ?」
私は頭の中に浮かんだ疑問を、私の目の前にいる男にぶつけた。そうするしかなかった。 だがその男は、大きくため息をつき。そして、苦笑いを浮かべて言った。
「俺もあんたに、それを聞きたかったんだけどな……」
その言葉を聞いて、私はこの現実を受け止めざるを得なかった。これは何か、相当に、とんでもないことになってしまったのだと。そんな思いが、私の胸を満たし始めた。
私とその男は、部屋のほぼ中央で向かい合うようにして、同じようにイスに固定されていた。そのイスの足は、ボルトで床に固定されていて、手錠でくくられた体を揺すったくらいで動かせるものではなかった。
そして、私の右側、向かいにいる男からすると左側に、木製のテーブルがひとつあり。その上に、何かのモニターのようなものが乗っていた。今は何も映っておらず、真っ暗なままだが、このモニターに何かの意味があるのだろうか。それとも、ただそこに置いてあっただけなのか。とにかく、部屋の中には、私と男と、そのテーブルしか存在しなかった。
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