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 そして私は、そんな容疑者候補について口を閉ざした自分のことを棚に上げて。警察署に押しかけては、何の手がかりも掴めない捜査本部を罵った。それはおそらく、自分が騙した相手を言わなかったことを、誤魔化そうという気持ちもあったのだろう。犯人を捕まえられない責任を、全て捜査本部に押し付けようとしていたのだ。本来は、この男の言うとおり。その責任の一端は、私自身にあったのに……!    モニターの中では、尚も娘が絶叫し続けていた。何度も何度も、繰り返し、私を呼び続けていた。私は永遠に続くかのようなこの「復讐」を、ただじっと、全身で受け止めるしか術はなかった。そんな私を見つめながら、男は、相変わらず抑揚のない、感情の消えた口調で。淡々と、独り言のようにぽつりと呟いた。 「なあ、あんた。さっき言ってたが。まだ、俺を……そして、自分を。  まだ、『』かい?」 
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