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 男はそのギラギラした目でカメラの方を見やりながら、娘の右腕を取り。その手錠を外した。何をしようとしているのかと、私は映像を見続けていたが。男が自由になった娘の腕を、自分の両手でぐいと握り締めた時。私は思い出した。用水路で見つかった娘の遺体……それは、あらぬ方向に、手足を捻じ曲げられていた。しかも、「まだ生きているうちに」。  男が、これからモニターの中でしようとしていることがわかり。私は思わず絶叫した。 「やめろおおおおおおおお!」  その私の絶叫と、ほぼ同時に。男は、両手で掴んだ娘の右腕の、肘の関節部分をイスの背もたれの角に押し付け。そのまま、腕の上腕部を背中側に強引に捻じ曲げた。「ごきっ」という鈍い音が響き。突然襲った激痛に、今度はモニターの中で、私の娘が絶叫した。 「ぎゃああああああああああああ!」  へし折られた右腕の肘から下をぶらぶらさせ、自由を奪われた体を痙攣させるようにして、娘は叫んでいた。モニターの中で男は、娘の悲鳴を聞きながら。そんな娘を、更にギラギラした目で見つめながら、嬉しそうに語りかけた。   「さあ、もう一度、あのカメラに向かって。パパに助けてって、言ってごらん? 何度も言わないと、パパに伝わらないよ? さあ、大きな声で、言って!」 「痛い、痛い! 助けて、パパ、助けて! 痛い、痛いよ!」  身をよじるようにもがき苦しむ娘の姿を、私はこれ以上見ていられなかった。だが。モニターの中では、男が、娘の左腕の手錠を外し始めていた。
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