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「やめろ、やめてくれ! もうやめてくれ……!」  私の叫びも虚しく。男は娘の左腕を、自分の両手でしっかりと握りしめた。今度は、何をされるか、自分の身に何が起きるかがわかった娘が、健気にも身をゆすって抵抗したが。大人の男の力にはかなわなかった。  ごきっ。 「あああああああ! ああああああああ!!」  もう、悲鳴とは言えない、私がそれまで聞いたこともないような娘の声が、コンクリートで囲まれた部屋中に響き渡った。私は下を向き、モニターから目をそむけたが。手足を拘束されている私は、耳を塞ぐことまでは出来なかった。娘の声にならぬ絶叫が、必死に私に助けを求める声が。私の耳を貫き続けた。 「やめろ……やめてくれ……」  私はうつむいたまま、自分の足の上に嘔吐した。そんな私の姿を、男は尚も平然としたまま見つめ続けていた。 「なぜ……なぜ、私を。私自身を殺さなかった?」  私は、なんとか上に向き直り、男にそう問いかけたが。男は、なぜそんなことを聞くのかと言いたげに答えた。 「なぜ、って。さっきも言ったろう? 俺の目的は、あんたに俺と同じ思いを味あわせること。俺の苦悩を、苦痛を、絶望を。あんたに思い知らせてやることなんだよ。俺が味わったのと同じ、もしくはそれ以上の絶望をね……」
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