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◇
結局、一日待ってみたけど、楓から連絡は無いままで。
まあ…そうだよね。
『彼女です』って即答しない程戸惑ってんだからさ。
俺に連絡なんてくれるわけないでしょ。
楓は…そう言う人だから。
俺がそれ、一番良くわかってんのにね。どっかで『もしかしたら』って期待してた自分に苦笑い。
まあでも。
クラスの事とか、ステイ先の事とか、これから忙しくなりそうで、その事も伝えないとだし…一度会わないとな。
なんて、言い訳を並べて、ちょっと予定が入ってたけど、それを少しずらして、作った昼休みの時間。
呑気に満面の笑みでいかにも『留学満喫してます』って顔で現れた楓に、不満が募る。
…少しは俺の気持ちもわかってよ。
なんて、我侭な思考に傾いたら、ちょっと意地悪したくなった。
だけど、いつも通りのリアクションを返してくれる楓に、スーって心が落ち着いて、細かい事なんてどうでも良くなっちゃって。
楓の事で凹んでたはずなのに、本人に癒されるってね
やっぱり、この人と居る時間は俺には貴重だわ…なんて思いながらスマホを切った後、優しく触れた髪。その柔らかさに更に心が落ち着いてく
本当に…変わんない、この感覚。
こうやって楓と居て、楓に触れてる時間が俺に取っちゃ何よりもかけがえの無いもので。
だけど
「…無理にメッセージしなくていいよ。」
変わらないのは『俺が癒しを貰ってる』って事だけじゃないって痛感させられて、また気持ちが少し歪んだ
付き合った事で、少しは楓に近づけるのかな…って思ってたけど。
楓に出会ってからずっと抱えてる俺の『想い』は叶わないまんま…って事だよな。
そんな風に思ったら、また感じたストレスと虚脱感。
それに駆られて皮肉なんて言っちゃって、余計に楓を困らせて。
何か、ほんと、悪循環。
…丁度良かったかな、忙しくなるから。
理由があれば、それにかこつけて離れてみんのもアリかもしんない。
重ねた唇が未練を生み出してもっと触れたくなったけど、やっぱり戸惑ってるその表情に思わず本音を吐いてた。
…ごめん。
俺がさ、もっとしっかりしてる人間ならそんなちっぽけな事で楓の事困らせたりしないんだろうね。まあ、でも、これが俺だから。
ちゃんと気持ちも状況も落ち着いたら、また話そっかな、色々と。
少しだけ時間、頂戴ね…。
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