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◇
「悠、また明日!今日はありがとね。」
午後の終業の鐘の後、鞄からスマホを取り出したら、マミがそう言って教室を出て行った。
それに、軽く手をあげて答えた後、すぐさま楓とのメッセージ画面を開く。
あ~…やっと放課後だわ。
結局一日、落ち着かなかった。
何してても今日の放課後の事考えちゃって、どっか浮き足立ってて。
まあ、とにかく一刻も早く楓に会って落ち着かせて貰おう。
『完全に浮かれてんな、俺…』って苦笑いしながら通話をタップしようとした瞬間
「(悠!)」
帰ったはずのフレッドが血相変えて教室に飛び込んで来た。
「(楓知らないか?!)」
「(……は?)」
「(今、学生課から呼び出されてさ…楓、午後の授業無断欠席したらしいんだよ。
家に連絡入れたみたいなんだけど、ケイトさん達仕事でいないからさ…同居してる俺んとこに連絡があって。悠なら知ってんかな?って思って戻って来たんだけど。)」
「(や…俺の方には…。)」
「(そっか…もうちょい探してみるわ。)」
ちょ、ちょっと待った。
何これ、どっきりかなんか?
楓が行方不明…ってどう言う事?
立ち上がり徐に鞄掴んでフレッドと一緒に教室を飛び出す。
その瞬間
「(うわっ!)」
「(きゃあ!)」
フレッドと誰かが正面衝突。
「(ごめんなさい…あっ!フレッド、会えて良かった、さっきの話で思い出した事が…ってああっ?!)」
少し小さめの金髪の女の子が俺を見て驚いてる。
「(…ごめん、ソフィア。どうしたの?)」
謝りながら覗き込んだフレッドには目もくれず、俺を見つめるその子はその大きく丸めの目を2回ほど瞬き。
「(あなた!“恋人席”に座ってた人!)」
フレッドが怪訝そうに俺の方へ振り返った。
ソフィアは俺を見たまま話を続ける。
「(今日の昼休み、楓も一緒にお昼食べようって校舎裏のグラウンドに誘ったって言ったでしょ?その時、楓がその人の事見つけて…。)」
「(…『「用事思い出した」って言ってその場を離れた』に繋がんのか)」
「(そう!)」
『あれ』を…見てた。
「(…悠。もしかして、“あの件”で?)」
「え?(ああ…うん、まあ…)」
動揺を隠せない俺の生返事に、ジッと真顔で見つめるフレッドの瞳が揺れた。
や…隠すつもりも無かったけど。別にやましい事してたわけじゃないし。
つか、今日会ったら、楓に話すつもりだったし。
そう言うジンクスみたいの、あの人好きそうだから、『ランチする?』って聞こうかなって思ってたし。
ふと脳裏を過った俺の誕生日の出来事。
俺…またあの人の事、無意識に傷つけた…?
「(…とにかく、これから一旦家に戻ってみるわ。悠に連絡あったら俺にも連絡して?ケイトさん達も心配してんから…。)」
思わずフレッドの服を引っ張った。
「(な、何だよ…。)」
「(…もしかすんと、楓、つかまるかもしんない)」
“楓、今度から居なくなる時は場所教えて?“
“…もう二度としません”
……あの時とは状況も場所も違うけど
『都合がいい』って言われたらその通りだけど。
“ほんとに?誓える?“
“うん、絶対しない“
『約束』…守って…楓。
『授業終わった。今どこ?』
動揺を隠しきれないで震える指先で、何も知らなかったかの様にそう打って送信した。
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