それぞれの想いとタイミング

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. 悠が帰った後 『苦しい』 悠に言い放ってしまった言葉にどうしようもなく、心の中が痛くなって、悲しくなって、ずっと、布団を被って涙を流してた。 私…何をやっているんだろう。 あんな風に悠を傷つけて… そう思えば想う程、涙が溢れて止まらなくて。 どの位泣いていたんだろう…。 それも分からない程、暗闇の中で涙を必死で拭ってた。 ~♪~♪~♪・・・ 枕元に置いておいたスマホが着信音を奏でて、のっそり布団から顔を出した頃には、もう部屋の中は真っ暗で、スマホだけが光を帯びて輝いて見えた。 そっと手に取ったら あ… 思わず勢い良くタップ。 「も、もしもし!」 『あらあ…元気そうね!何よりだわぁ~』 スマホから聞こえて来る、カラカラ笑う声に、 「み、ミキホさ…」 散々泣いて、枯れてしまったはずの涙がまた溢れて来た。 『…もしもし?もしもし? やだ、楓ちゃん、あたしが電話した位で感動して泣いちゃってるの? あ!もしかして、ホームシックってやつね!んも~相変わらず可愛いんだから!』 『…お前が恐かったからの間違えじゃなくて?』 『だまらっしゃい!葵!』 後ろから、ちゃかす葵さんに一喝するミキホさん。 思わずそのやり取りに、ふふって笑った。 『…楓ちゃん?何かあった?』 今度は落ち着いた声色。 やっぱりミキホさん…好きだな。 そんな風に思ったら、気持ちがフワリと軽くなる。 「あの…。」 自然と口が開いてた。 . 『…そう。そんな事があったのね。』 ずっと、ただ私の話を黙って聞いてくれてたミキホさん。 『大変だったわね、楓ちゃんも…。帰って来たら、悠ちゃん説教してやらなきゃ!』 『お前がしたいだけだろ、説教。』 『だから、葵は黙らっしゃい!』 また後ろからちゃかした葵さんに一喝すると 『…離れてるからね、残念ながら力にはなれないけど。』 優しい声色でまた、受話器越しに戻って来た。 『でも、少しは楓ちゃんの役に立てそうな話が出来るかもしれないわ。 実はね?霧島さんが今、イギリスに居るの。』 「え…?」 霧島さんが…イギリスに? 瞬間的に浮かんだのは 『楓ちゃん…』 あの柔らかい笑顔。 『霧島さん、来月からロンドンで個展を開く為の準備でそっちに渡ったみたい。楓ちゃんがイギリスに居るって言ったら、会いたがってたわよ~! でもほら、あの人、無料通話とか、トークとか…ハイカラなもの、やってないから。楓ちゃんとの連絡が取れないみたいで。』 ミキホさんが話す嬉しいサプライズに、少しだけ沈んでた心が浮かび出す。 「ミキホさん、連絡してくれてありがとうございます」 そう呟くように言うと、ふふって笑い声がスマホから聞こえて来た。 『…楓ちゃん?悠の事、まだ好き?』 「え…?はい…好き、です。」 『そう!だったら一つだけ、おせっかいな事、言わせてもらうとね? 他にはいないと思うわよ』 「ほ、他には…?」 『そっ!悠ちゃんの彼女になれる人!』 ………はい? 「や…あの…マミさんの話、しました…よね。」 その上で、その返事?? 「私の『彼氏が出来る人は』とかの間違いでは…。」 『あらぁ!楓ちゃんの彼氏になりたい人なんて、山の様にいるわよ! フレッドとか言うちょこざいに押し倒されない様に気をつけなさいよ~?傷物になったら、悠ちゃん、病に倒れるわよ!』 ちょ、ちょこざい…。 『あ~もう!ミキホ、言い過ぎ!』 カラカラ笑って『若いっていいわね!』って言ってるミキホさんから葵さんが見兼ねてスマホを取り上げてる。 『もしもし、楓ちゃん?…ミキホは色々言ったけど、あんま気にしない方がいいよ?まあミキホの言った事、否定もしないけど。』 「え…。」 『彼女になれる人云々もそうだけどさ 悠は多分、寝込むよ。楓ちゃんがこのまま離れてったら。』 『賭けてもいいよ?』って笑ってる葵さんから、『んもう!あんたのが過激な事言ってんじゃない!』とスマホを取り上げたらしいミキホさんの声が復活した。 『…とにかくね?楓ちゃん、よかったら、霧島さんに連絡取ってみて?』 「は、はい…。」 『んも~!葵が変な事言うから、楓ちゃん、引いちゃったじゃない!』 『や、俺は何も』 二人のやり取りに、思わずまたふふって笑ったら、また少し、心が浮上してる事に気が付いた。 …ありがとうございます。 霧島さんの事もそうだけど、こうして連絡をくれて話をしてくれた事が、今の私には、最高の贈り物です。 .
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