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「あ~…身体が若干ばきばき言ってるわ…あ、来た。ほい、楓のスーツケース」
「うん、ありがとう…。」
「…時差ぼけ?」
私の曖昧な返事に面白そうにキュッと頬をつねる悠。
「ひはうほ(違うよ)…。」
仏頂面でそう返した私にフハって笑った。
……結局。
お互いにトイレに行く以外、ずっと握られてた掌。
…本、読めなかったし。
寝るしか無かったし。
気が付いたら、私が悠に凭れてたし。
その光景を見たくなかったのか、マミさん、思い切り背中向けてたし。
何か、飛行機だけでグッタリな感じ…。
「楓、ステイ先どの辺?」
「えっとね…確か、3番通りの…。」
「俺は15番通りか。これ、結構離れてんのかな。」
悠が私と自分の書類を見比べながらバスに乗り込む。
「ま、学校では一緒だから関係ないか。」
「う…ん。」
「…何、その心もとない返事。」
エヘッて愛想笑いで返した私に眉を下げる。
「や、さすがにさ…あなただって勉強して来てるでしょ?」
「う、うん。まあ…。」
そりゃ、して来てはいるけどさ…悠とは出来が違うもん…
今日から入学する、大学に付属で付いてるこの語学学校。
ディベロップメンタルクラス(通称DE)1~4とその上のアカデミッククラス(通称AC)1~3に分かれてて。AC2以上を2期通うと自動的に大学の大学院へ入れる為の養成コースに入学出来る。
だけど、AC3は滅多に開講されない程難しいクラスで。言ってしまえば、AC2がトップクラスって事になる。
入学手続きの後に行われたクラス分けの為の語学力テスト。
「それじゃあ、クラスを発表するぞ…。」
自分の名前が発表されたのはAC1。まあ、それでも頑張ったとは思うけど。
「きゃー!柴田君凄い!始めからAC2?!」
「おたくらもじゃん。つか、英米学科だもんね、当然か。よろしくね。」
…英米文学部のコ達はともかく。
悠ってやっぱり凄いんだなあ…。
英米文学科のコ達に囲まれてる悠を尊敬の眼差しで見ていたら、マミさんと目が合った。一瞬ジッと見つめられたけどすぐにフイッと目線を反らされる。
「ねえ、柴田君!これからクラスに行くんだって!一緒に座ろうよ!」
「…俺、一番後ろで良いから。」
「あたしもそれでいいよ!分からない所教えてあげるし!」
「えーマミ~」
他のコも騒ぎ出したら、悠は眉を下げた。
「あ~…はいはい。何でもいいよ、席なんて。とりあえず行くんでしょ?クラス」
そう言って歩き出し、少しだけこっちを向く。
「楓さん、また後でね」
それに少し微笑んで返したけど…何か気持ちがモヤモヤする。
何だろう、この気持ち。初めてかも。
ちょっとイライラして…だけどそれが何なのかが良くわからなくて。
う~ん…。
考え込んでたらフッとミキホさんが脳裏に浮かんで来て『若いって良いわね!』って言われた。
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