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     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「あれ。お前のバンドのやつじゃねぇの?」  下校時間。友達からつっつかれ、校門に目をやる。 「…わかんない」  どれだけ目を細めても、徹底的に目が悪い僕に、この距離はつらい。 「そうだよ。ほら、なんつった? 右のやつ」 「右?」  客席から見て、だよね。ってことは玲次? でも、玲次の学校からうちの学校まで、電車使って15分はかかるぞ。僕、授業終わるなり出てきたのに。 「あ、本当だ」  やっと僕に玲次の容姿が確認出来る距離は、玲次に僕の声が聞こえる距離だったらしい。一歩踏み出した玲次に頭を小突かれる。 「何が本当だ、だ」 「だって、見えないんだよっ」  玲次の制服姿って初めて見た。練習の時もちゃんとキメてくるし。  長い髪を無造作に束ねて、カッターのボタンいくつか開けて、ネクタイぶら下げて、紺のブレザー羽織って。 「玲次、サラリーマンじゃん」 「うるせぇ」  すごくカッコいいんだけど、玲次の顔じゃ制服でさえ高校生じゃないんだよね。 「何やってんだよ、こんなとこで」 「お前を待ってた」  一瞬、ドキッとする。けれど、深い意味はなかったようで。
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