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     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  それが単なる口実だったのは、すぐにわかった。玲次の部屋に一枚だけあった「ルー・リード」は、ルーが過去に在籍していたヴェルヴェット・アンダーグラウンドだったから。 「僕、ルー・リードって言った気がする」 「それ一枚しか返してくれなかったんだから、仕方ないだろ」  玲次、友達をせっついてくれたんだろうか。それを思うと、まあいいか。  これ、有名なアンディ・ウォーホルのバナナのジャケット。ファーストアルバムだって書いてあったっけ。  僕が生まれるずっと前のバンドなのに、何度聴いても驚かされる。やっぱりこのアルバムすごく好きだ。二曲目のI'm waiting for the manが一番好きな曲。 「そういや、さ」  玲次が僕のサブバッグに目を落としながら言った。僕は内心、ぎくっとする。 「お前、最近彼女どうしてんだ?」  覚えていたんだろうか。由華にもらったって話したキーホルダー。さっき、はずして捨ててしまった。 「…別れた」 「へぇ、何で」  でもまさか、ついさっきのことだとは思っていないらしく、呑気そうにそう聞いてくる。
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