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「崇純にはこれ、な」
誠さんが悪戯っぽく、立てた人差し指を唇に当てて見せる。
「また遊んでるって怒られっからさ」
「あ…はい」
すみません、と頭を下げ、扉を閉めた。
そういう人たちを直接見たのは初めてだった。でも、嫌だなとか気持ち悪いとかは思わなかったし、やっぱりいるんだな、くらいにしか感じなかった。
暫くすると、忍さんがジーラスの中に戻ってきて、僕に声をかけた。
「さっきはごめんな。すっげービビってたじゃん」
僕の困った顔が余程おかしかったのか、笑いを噛み殺しながら言う。
「いえ、あの」
「俺らが付き合ってんの、知ってただろ?」
「…知りませんでした」
「へぇ、珍しい。じゃ、他のやつらのことも知らないんだ?」
「他って?」
そんな、他の人のことまで知るわけがない。
「ま、ジーラスに出入りするんなら知ってた方がいいだろ。サイレントラヴァーズの辺とか」
「サイレントラヴァーズ?」
ジーラスで、ナイトメアとトップの人気を二分してるバンドだ。
「ショウとカツミ、同棲中」
「同棲…」
同居じゃなくて、同棲。そのニュアンスの違いは、そういうことか。
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