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「運命に背く術は、たれも持たぬものじゃ」
「運命 !! 」
激しく老婆に向き直り、リュウは叫んだ。
「ならば私は喜んで受け容れるとも !! 我があるじにいま一度まみえる方は死をもってするしかないというのに、この身はといえば自決を赦されぬ約定…… ! おまえの言う運命であのお方にお逢い出来ようものなら、地の涯まで行ってみせる !! さあ、どこへゆけばいい、どこでお待ち申し上げれば我があるじが迎えに来て下さるのだ !! 」
激昂するあまり、剣を拾うことも忘れてかきくどくリュウを、老婆はしばし沈黙を持って見守るふうであった。掌の水晶球が、哀れむようにちかりと瞬く。
やがて老婆の口が開かれた。
「死に非ず。この世に於いて、おまえさまはかの若者に逢いなさるのじゃ。長い銀の髪、美しい面と、竜の精神を備えたあるじどのにな」
リュウは息を呑み、石と化したように立ちすくんだ。到底、信じられぬ。信じられようはずがない------にもかかわらず、彼は茫然と尋き返したのだった。
「い……つ ? 」
「今宵、まもなく」
「どこで…… ! 」
「ごらんなされ」
老婆の掲げた水晶球のなかには、スノウローズ城の荘厳なシルエットがあった。
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