空の碧 風の翠

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 「おい、こやつアナキンさまを見ているぞッ! 」  兵士たちはリュウの呼び募っている相手に気づき、にわかに色めき立った。  「引っ捕らえろ!! 殿下に害成す輩やも知れぬぞ !! 」  「よし、縄を掛ける」  乱暴な力で腕を掴まれ、リュウは動揺した。  「違う!! 怪しい者ではない、私は------私はあのお方に呼ばれて来たのだ !!」  「なんだと。このような夜更けに、王子が客を呼んだりなさるものか」  「-----王子……ッ ? なにを言って------あのお方はわがあるじだ、邪魔をするなッ!! 」  「こやつ、本物の気狂いだ」  「そうじゃない、放せ !! 」  助けを求めるように、リュウはいま一度バルコニーを見やる。しかしそのとき、あるじの側に何人かの人影が集まっているのに気づき、愕然とした。彼らはあるじの身体に手をかけ、部屋のなかに引き戻そうとしているらしかった。  「そのお方に触れるな !! 」  「こら、大人しくしろ」  兵士たちがこもごもリュウの体に荒々しく縄を掛けながら、  「殿下、大事ございませぬ ! 曲者は引っ捕らえましたゆえ、ご安心を ! 」  と叫んだ。あるじの黒い影はちょっと立ち止まり、逡巡するかに見えた。それを周りの兵士が構わず連れ去ってしまう。  「メルセデスさま !! 」  反射的に身をもがいたが、捕縄が邪魔をした。リュウは躊躇わず、ひと思いにそれを断ち切った。  どよめきの叫びが上がる。彼は絡みついて来る何本もの腕と槍を荒々しく振り解くや、瞬時に夜空に向けて翔けのぼったのだった。   
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