8人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、こやつアナキンさまを見ているぞッ! 」
兵士たちはリュウの呼び募っている相手に気づき、にわかに色めき立った。
「引っ捕らえろ!! 殿下に害成す輩やも知れぬぞ !! 」
「よし、縄を掛ける」
乱暴な力で腕を掴まれ、リュウは動揺した。
「違う!! 怪しい者ではない、私は------私はあのお方に呼ばれて来たのだ !!」
「なんだと。このような夜更けに、王子が客を呼んだりなさるものか」
「-----王子……ッ ? なにを言って------あのお方はわがあるじだ、邪魔をするなッ!! 」
「こやつ、本物の気狂いだ」
「そうじゃない、放せ !! 」
助けを求めるように、リュウはいま一度バルコニーを見やる。しかしそのとき、あるじの側に何人かの人影が集まっているのに気づき、愕然とした。彼らはあるじの身体に手をかけ、部屋のなかに引き戻そうとしているらしかった。
「そのお方に触れるな !! 」
「こら、大人しくしろ」
兵士たちがこもごもリュウの体に荒々しく縄を掛けながら、
「殿下、大事ございませぬ ! 曲者は引っ捕らえましたゆえ、ご安心を ! 」 と叫んだ。あるじの黒い影はちょっと立ち止まり、逡巡するかに見えた。それを周りの兵士が構わず連れ去ってしまう。
「メルセデスさま !! 」
反射的に身をもがいたが、捕縄が邪魔をした。リュウは躊躇わず、ひと思いにそれを断ち切った。
どよめきの叫びが上がる。彼は絡みついて来る何本もの腕と槍を荒々しく振り解くや、瞬時に夜空に向けて翔けのぼったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!