空の碧 風の翠

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 「ち……がう…… ? 」  コバルト・ブルーの濡れた双眸が、激しい驚愕に見開かれた。  いま彼の前にいるのは、長い銀の髪と白い肌、すらりとした若枝のような長身の青年である。歳の頃は十七か八、凍てつくかのごとき碧い瞳に正反対の、とてもやさしいかぎろいを称えた美しい若者であった。  銀の髪以外相貌が違う。メルセデスの、息をするのも忘れるような美貌とは似ても似つかぬが、それは問題ではない。リュウの身体に流れる旧き血が、きっぱりとこれはあるじではないと否定していたのである。  「まさか……こんな、馬鹿な……」  「決してぬか喜びをさせるつもりはありませんでしたが」  いたわるように、そっと相手が言った。  「やはり、ひと違いだったようですね」  深い、碧い目が、哀れみを浮かべてひとつ瞬く。  「どれほどの想いで来られたにせよ、こうして相対せばあなたにはわかるのでしょう。私はアナキン・サウザリー。サウザルーンの世継ぎです。それ以上でも、それ以下でもありません」  リュウはがくりと膝を落とし、のろのろと首を振った。似てはおらぬ。見目形は決して似てなどおらぬが、どのような姿であれリュウには必ずわかるし、リュウと心を重ねる“サファイアの眼”が彼をここまで導いて来たのである。その相反する葛藤がリュウをさらに混乱させた。  「剣------ 剣よ、これへ !! 」  縋るように呼びかけると、“サファイアの眼”は今度はたちどころに彼の手のなかにその抜き身を現した。これが件の封印であるのか、刃には不思議な、金属とも革ともつかぬ柔らかなものが巻き付けられてあったが、リュウがそれをむしり取るや、勇んで歓喜の歌を唄い出す。そうしてしきりに目の前の青年に 執着を示すのである。  「そんな……」  剣は嘘をつかぬ。けれども、違うと血が叫ぶ。これはメルセデスではないと。メルセデスのために生まれたこの血が、裡で荒れ狂いながら否定している。リュウの混乱をよそに、  「あなたもこの剣も、なんという力の持ち主であるのか……」  驚嘆したように青年は呟いた。そうして、  「あなたの、御名は ? 」  「------ 我が名は剣を持つ魔法使い、リュウ・サエキ・ガーランド。遍く世界の魔を統べる者------ 」  茫然としたままリュウが思わず知らず正式な名乗りを挙げてしまうと、  「剣を持つ魔法使い……」  王子は噛み締めるようにその名を繰り返した。
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