人魚の肉

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中には、小指ほどの大きさの肉片が入っている。 一見、魚の尾のように見える。 その切り口は珊瑚のようで、鱗は輝く虹色だ。 腐敗の気配もなく、瑞々しく美しい。 男は小瓶のふたを開け、手のひらにそれを落とした。 しっとりと濡れて柔らかい。 人差し指と親指でつまみ、そっと唇で触れてみる。 南国の花のような、甘い芳香が鼻をくすぐる。 風が、わずかに開いた窓から吹きこみ、薄いカーテンを揺らした。 カーテンの隙間から差し込む光線が、人魚の鱗を、いっそう虹色にきらめかせる。
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