人魚の肉

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その光をブチ猫の珠代がとらえた。 金の瞳が、カッと大きく見開かれる。 前肢を踏ん張って低く構え、尻をあげ、珠代はユラユラと揺曳(ようえい)した。 珠代が人魚の肉へ飛びかかると、茶虎の銀二も反応した。 ブチ柄にすかさずタックル、 目にもとまらぬ速技で、猫パンチを繰り出した。 手技(てわざ)足技(あしわざ)横捨身技(よこすてみわざ)関節技(かんせつわざ)、更には、回転猫車(かいてんねこぐるま)。 「シャアアッ」 珠代の威嚇の声が響いた。 回転猫車の勢いで、人魚の肉は、(くう)を舞った。 少し開いた窓の隙間から、そのまま外にポロリーンと投げ出された。 珠代と銀二は、もう興味を失ったらしい。お互いにソーシャルディスタンスを保ち始めた。 「やるニャ、おぬし」 「そっちこそ……。で、ニャニを取り合っていたんですっけ」 とでも言うように、二匹はチラリと目を合わせると、香箱座(こうばこすわ)りした。
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