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喪失感が胸を襲った。
たった半日、小瓶を眺めていただけだったのに。
男は部屋に戻ると、呑気に毛づくろいしている珠代の狭い額を撫でた。
銀二は、もう眠っていた。
あの鴉は、人魚の肉を食ったのだろうか。
そして不老不死の力を得たのだろうか。
分からない。
男は思う。
これで正解だったのかもしれない。
あれを口にしていたら、今頃俺は――。
いや、もう済んだことだ。
人魚の肉。
あんなものは幻だった。
男はかすかに笑い、書きかけの記事を削除した。
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