ご令嬢取り合いレースとは

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ご令嬢取り合いレースとは

「父さん、お呼びですか?」  安曇重工の虎ノ門本社ビル。その社長室に真理と一緒に入ると、執務席の父が立ち上がって僕に笑顔を見せた。 「拓也、MITを首席で卒業したそうだな。流石、俺の息子だ。まあ、そこに座れ」  父に指示され部屋の中央に在るソファに腰を掛けた。父が対面に満面の笑顔で腰を降ろす。真理は後ろに立ったままだ。 「お前も承知しているだろう。明日の三社のレース。安曇重工がトップになる為の試金石だ」  父は若くして祖父から社長の要職を引き継ぎ、今では安曇重工を日本トップ3のモノ造り企業に成長させた。しかし残念ながらトップ1には未だ届いていない。  現在、日本一の総合モノ造り企業は五菱重工で、未だ安曇重工の二倍の規模を誇っていた。また安曇重工とトップ2を争っているのが、四井重工で、ここの御曹司、四井和幸は高校の同窓で、今年ケンブリッジ大学を卒業し帰国している。  そしてもう一社、少し格は落ちるが本多重工がそれに続いており、ここの御曹司、本多一郎も僕と和幸と同じ高校出身で東京大学を卒業している。  この安曇、四井、本多の三つの会社が明日『あるレース』に参加することになっている。それは正に各社の将来を掛けて、ある『もの』を『取り合う』レースだ。
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