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帰国
僕の乗るフライトは太平洋上で高度を下げて東京湾に達していた。右の窓の外を見ると久しぶりに見る日本の風景が広がっている。
その中に一際高い超高層ビルが見える。東京スカイツリーを超える高さ千メートルのビル、あれが……。
「……五菱の新しい本社ビルか……」
羽田空港税関を出ると見慣れた女性が待っていた。僕を見つけて彼女が軽く頭を下げた。
「拓也さん、お帰りなさい」
「やあ、真理」
手を上げると彼女が駆け寄って来る。彼女は僕の父、安曇重工の社長秘書、小泉真理だ。
「荷物をお持ち致します」
「良いよ、軽いから……」
「それでは、車を待たせていますので、こちらへ」
彼女の後ろに続いて、車寄せの在る一階に向かった。
車に乗り込むと助手席の真理が振り返った。
「ボストンからお戻りなったばかりで申し訳ありませんが、社長が拓也さんにお話が有るそうです」
久しぶりに見る日本の景色を車窓に見ながら、僕は頷いていた。
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