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結局、その日は行かないままだった。
行く必要がなかったから。
別にそういう気分ではなかったし、須田に用事があるわけでもない。行ったからと言って、須田と何か話すわけではない。
しかし、もう行かないと決めているわけでもない。
この季節だからかなリ寒かったが、それでもあの星空はキヨリに感動をくれたのだった。
いや、星空だけでなく、ただあの何もない静かで穏やかな雰囲気が。
「キヨリ、久し振りやし一緒に帰ろか?」
アイミが帰り際、化粧を直しながら尋ねる。
「てか、屋上行く予定?」
「ううん、今日は別に」
「今日は? ほな何か食べに行こか」
「あれ? カズナリくんは?」
「今日はバイト早いらしいわ。あたしはまだ時間あるし」
珍しいこともあるものだ。こんなことはめったにないだろうとうなずく。それと、今日はキヨリも寄り道の予定だけはある。
「あたし買い物行きたいねんけど、付き合ってくれる?」
「ええよ、何買うのん?」
「コート。制服の上に着られるようなのがないねん」
「え? この上にコート着るのん?」
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