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 指定のコートがあるとはいえ、事実上コートは自由だった。  校内で着ていない限り注意されることはないし、取り上げられることもない。例え校外で教師に見付かっても、余程派手でない限りは見て見ぬフリをしてもらえる。  幸い、キヨリは派手好みでもないし、そもそも似合わないのだから自分の趣味で選んでも大丈夫だろう。 「キヨリは背ぇないから、ロングは似合えへんやろ」 「あたしもショートかなあと思っててん。じゃ、こっち…は可愛過ぎるなあ」  丈は短めの方が良いという意見の一致で選択の幅は狭まったのだが、それでもこれといった決め手がない。 「これ、形も可愛いねんけどなあ」  羽織って鏡を見ても違和感があるのは、制服の色と合っていないからだ。ショートコートとなると、スカートの裾が見えるのは避けられない。 「ほな、色違い。こっちどや?」  あれこれと取り出すアイミを不審がって、店員がちっとも寄って来ない。ここでは明らかにアイミの方が浮いた存在だからだ。  どう見てもキヨリの物を選んではいるのだが、それでも声を掛けにくいらしい。これはこれで、買い物の連れに最適といえるかもしれない。
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