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「それか、こっち。こっちのんが色薄いし」
「形はちょっと違うんやね」
最初に取り出した物より、少し丈が長めでスカートの裾が少し見える程度。淡いピンクでリボンのモチーフがあちらこちらにそれとなく付いている。はずせるフードには白いフェイクファーもあしらってある。
「こっちのが可愛いなあ」
「キヨリっぽいと思うけど?」
はおってみると、丈の長さや色合いもぴったり合うし、かなり軽い。
「ほんま?」
前も締めて鏡を覗く。
派手過ぎず地味過ぎず、キヨリの好みにぴったりと合う。自己満足ではなく、これは見た中で確実に一番似合っている。
「これにしよかな」
つぶやき、隣から鏡をのぞいているアイミと目を合わせると、彼女もうなずく。
「これはもう、キヨリの為のコートやろ」
「まーた調子ええなあ、アイミンは」
もう一度、後ろの丈や袖の長さなどを鏡で確認する。
「そんでも、気ぃ付かんのやろなあ」
「何?」
独り言のつもりでつぶやいた言葉を、アイミは聞いていたらしい。
「何でもない」
それを、笑ってごまかす。
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