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ここにはそれしかなかったし、それ以外は必要ない。
多分、それが心地良くてキヨリはまたここへ来たのだ。
「そや、須田くん、これ」
夕方のうちに買って来ておいたブランケットを、須田に差し出す。
「何? …あ、毛布。ありがと」
「これ敷いて寝たら? 背中から冷えるんやない?」
「あ、そっか」
使い道にやっと気付いた様子でそれを広げてコンクリートの上に広げる。
「部室はあるのん? 置いといたらええし」
「ない」
「部室が?」
彼はうなずき、ブランケットに再び腰を下ろして寝転がる。
「でも、階段室やったら置いといても別にかまへんしな」
ブランケットは、須田の背中をカバーするだけで精一杯。それでも、ないよりはだいぶマシだろう。
「あ、キヨちゃんもここおいでな」
何とか腰を下ろせるくらいはスペースが空いている自分の隣をぽんぽんと叩いて示す。
かなり狭いそこは腰を下ろしてやっと、だ。
少しためらう。
迷ったまま空を見上げると、ふっと光が横切った。
「あっ」
慌てて目を凝らすがもう遅い。
初めて流れ星を見たと言うのに、あまりに呆気ないまま消えてしまった。
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