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 今日は、家庭科のある日だ。しかも調理実習。キヨリにとっては一番楽しみな授業。  この為に、ずらせる仕事はなるべくずらしてもらう程だ。 「あー、かったり。さぼっとってもええ?」  教室を移動しながら、アイミはだるそうにしている。 「ねむそうやなぁ、アイミン。バイト?」 「バイトー。アフターで3時まで飲んどった」  彼女がキャバ嬢をしているのは学校中みんなが知っている。このあっけらかんとしたキャラクターで、立派にナンバーワンをつとめているらしい。  しかし、何度もバレて停学も食らっているが。まったく彼女は懲りるという言葉を知らない。 「またそんな無茶して」 「無茶はどっちやねん? どうせ今朝帰って来てんやろ?」 「そうなんやけどね。しゃーないわ、バラエティの収録みたいまともに進まへんもん」  調理実習室は廊下をまっすぐつっきって、渡り廊下を渡ってすぐ。どうしても二年生の全教室の前を通って行かなければならない。しかし、もう彼らの視線にはすっかり慣れてしまっている。  むりやり引止められない限りどうということもないのだ。 「あ、カッズナリー!」  アイミが突然大声で叫ぶ。
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