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「これのCMに出てた子! あーもう、そんじゃ、あれはどないやねん。ルナシャワー」 「それは何?」 「炭酸じゃい」 「それが何?」  彼と会話が噛み合ってない男の子は、今朝、口を開けてキヨリを見ていた男の子だ。  歯並びは悪いし、黒髪は地味目で目立たないかもしれない。  しかし、よくよく見ればその黒髪には清潔感があるし、ぱっちりした大きな茶色い目は透き通っているし、鼻筋も通って高く、かなり整った顔立ち。  それが、要領を得ないといった風情で首を傾げている。 「CM見たことないんかい!」 「ないなあ」 「空ばっか見とるからじゃ! あー…あ、そんじゃミルキーフラワー!」 「何それ?」  話の通じなさに頭をかきむしり、今にも叫び出しそうな友人とは反対に、きょとんとしている彼。  ポケットを探ると、今話題に出たミルキーフラワーが入っていた。一番新しいCMのヨーグルトキャラメルだ。  それを取り出し、彼の前に歩み出る。 「はい、これ」 「え?」 「これ、ミルキーフラワー。美味しいよ」  ポンと手渡しにっこりと笑うと、ちっとも訳がわからないといった様子でキヨリの目をじっと見ている。
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