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貴族達が住む区画を抜けて、まず案内されたのは裕福な商人たちが住む区画だった。周囲は静まりかえり、みな眠りについているようだった。ここはもう貴族達の区画ではないのに、ミス・ゲシュタルトはまだ私のことを下ろしてくれない。
彼女は警戒するように周りを伺いながら歩く。
「お嬢さん、お嬢さんが言っている庶民というのは、こういう所に暮らす人達のことかしら?」
その問いに私は頭を振る。それを見て、ミス・ゲシュタルトの口元が微笑む。
「そうね。この辺りに住んでいる金持ちの商人は、あなた達貴族とそんなに変わらない生活をしているもの。
貴族のような特権や義務はないけれども、煩わしいしきたりとか、そう言うのはあるみたいね」
「庶民でも、そう言うのがあるんですね」
「お金があれば、貴族のまねごとをしたくなるものらしいわよ」
そう言ってから彼女は、この辺りの人達は、私のターゲットにもなるけれど。と笑う。
ここからさらに移動して、次はこの街に住む職人や、富豪でない商人たちの区画を案内してくれるという。そこは裕福ではないけれども、みなそれぞれに楽しく暮らしているという。
そこはどんなところなのだろう。期待に胸が膨らんだ。
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